食品表示法の成り立ち
食品表示法は、2020年4月より、食品の表示に関する一元化した法律として、施行されました。
これまでは、食品の表示に関して、主に以下の法律に記載されていました。
- 食品衛生法
- JAS法
- 健康増進法
さらに、詳しく見ていくと、
- 景品表示法
- 計量法
- 牛トレーサビリティ法
- 米トレーサビリティ法
- 酒類業組合法
- 医薬品医療機器等法
- 資源有効利用促進法
にも、食品表示に関する記載事項があり、しかもそれぞれの法律に関する所轄の省庁が多岐にわたるので、すべての法律を網羅して、表示をするのは、かなりの手間暇がかかりました。
そこで、2009年9月に消費者庁を設置し、ここで食品の表示に関する法律を一本化して、施行されることになりました。
生鮮食品と加工食品の表示内容
食品表示には、肉、魚、野菜などの生鮮食品と冷凍食品、菓子、弁当などの加工食品の二つに大別されます。
生鮮食品の表示内容
生鮮食品の表示には、名称、原産地が必要です、名称についてはブランド名(あまおう、九条ネギなど)でも表示が可能です。輸入品については原産国の表示が必要です。
魚類に関しては、名称、取れた海、川、湖の表示になります。名称に関しては、いわゆる出世魚といわれる、魚の成長具合に応じた魚の名前(例:ヤズ、ハマチ、ブリなど)を使用することもあります。輸入品は原産国の表示となります。また、養殖や解凍など該当するものはその表示も必要です。
食肉も同様ですが、生誕地と生育地が異なる場合があります。その場合は一番長く育った土地を原産地表示とします。例えば、カナダで生まれ育てられ、途中日本で飼育されることになったとしても、カナダでの飼育が長ければ、カナダ産と表示されます。
国産牛に関しては、容器包装や店頭にて10桁の個体識別番号が表示されます。輸入品やミンチ肉、内臓肉のほか国産であっても鶏肉や豚肉は対象外です。
これは、2003年の米国に端を発した狂牛病(BSE)問題により、2004年から国産牛に関しても個体識別番号が付され、酪農家での飼育から小売店で並ぶまでの流通過程までの全履歴を追えるようになりました。
卵については、生鮮食品扱いですが、名称、原産地、賞味期限、保存方法、選別包装者、使用方法の記載事項があります。特に賞味期限については、生食できる期限での表示となっていますが、期限を過ぎても十分に加熱することで、食べられますので、早めに食べるようにしましょう。
加工食品の表示内容
加工食品は表示内容に関しては生鮮食品と異なり、記載内容が多岐にわたります。
名称 | 一般的な名称(製品名ではない) |
原材料名 | 原材料を、使用した重量の割合の高いもの順に記載。アレルゲン、遺伝子組み換え情報も表示義務があるものは記載 |
添加物 | 添加物を、使用した重量の割合の高いもの順に記載。アレルゲン、遺伝子組み換え情報も表示義務があるものは記載 |
原料原産地名 | 輸入品を除くすべての加工食品について、製品に占める重量割合が上位1位の原材料の原産地として表示 |
内容量 | 重量や体積を単位(㎎やℓなど)を付して表示 |
消費期限または賞味期限 | 品質劣化が早いものは消費期限、品質劣化が遅いものは賞味期限 |
保存方法 | 商品の特性に見合った保存方法 |
原産国(輸入品のみ) | 輸入品の場合には原産国を表示 |
製造者等 | 表示内容に責任を持つ者の氏名、住所、実際の製造所及び製造者 |
栄養成分表示 | 単位当たりの熱量、タンパク質、脂質、炭水化物、食塩相当量をこの順に表示 |
また、原材料名栄養成分表示については、さらに細かく分けているものもあります。
従来の法律からの主な改正点
食品表示法の施工にあたり、従来の法律から大きく5点について盛り込まれているので、それぞれについて簡単に説明します。
1.アレルギー表示の義務化
「特定原材料」である7品目(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに)は、容器包装された加工食品について、表示が義務付けられています。
また、「特定原材料」に準ずるものとして21品目が制定されていますが、こちらは表示の義務化がされておらず注意が必要です。
(あわび、いか、いくら、さけ、さば、アーモンド、カシューナッツ、クルミ、ゴマ、大豆、オレンジ、キウイ、バナナ、リンゴ、桃、山芋、マツタケ、牛肉、鶏肉、豚肉、ゼラチン)
酒類に関しては、特定原材料を使用していても、表示義務がないので注意が必要です。
ほかにも、スーパーなどの店頭で売られている、総菜、パン、菓子などや、弁当やレストラン等の外食・中食として利用するお店も表示義務がないので、アレルギーの方は、お店の人に確認してから購入することをおすすめします。(アレルギー表示をしている店も増えてきてはいますが)
2.加工食品の栄養成分表示
新たに、一般加工食品及び一般用添加物については栄養成分表示について記載することが義務付けられました。
単位は100g、100㎖、1食分(○○g)のように、具体的に表示されます。
表示内容は、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量をこの順に記載しなければならず、仮に含まれていない成分であっても、省略することができず、「0(ゼロ)」と表示しなければなりません。
また、「0(ゼロ)」と表示されていても、ごく微量含まれている場合があります。これはある基準以下の微量な量の場合は「0(ゼロ)」と表示しても良いということになっているからです。例えばプリン体「0(ゼロ)」と謳われていても、実際にはごく微量の場合であれば、「0(ゼロ)」になっている場合がありますが違法ではありません。
このように食品表示法には、人体に影響を及ぼす恐れのない無い量であれば、一部において表示しなくてもよいとしている場合があります。
3.表示レイアウトの改善
従来の法律では、容器包装が小さいもの(30㎠以下)に関しては、表示が省略できましたが、食品表示法では以下の点については省略できません。
名称、保存方法、消費期限または賞味期限、表示責任者、アレルゲン、使用がある場合はL-フェニルアラニン化合物*(甘味料として使用されることが多い)
*…L-フェニルアラニン化合物は人体で作れない必須アミノ酸ですが、人によってはこれを分解する酵素が欠損して、蓄積することにより、知的障害を引き起こします。
また、原材料と添加物は明確に分けることが義務付けられました。別の欄に書いたり、改行する、”/”で区切るなどで分けられています。
(例)別枠の場合
原材料 | 緑茶 |
酸化防止剤(ビタミンC) |
4.製造所固有記号の記載と公開
2か所以上の製造設備のある工場で製造する場合、消費者庁に届けることで、製造所を固有記号で表示することができます。
そのままでは、消費者がどこの製造所で作ることが分からないため、連絡先やHP上での公開及びすべての製造所在地の表示のいずれかの表示が必要になります。
5.機能性表示制度の追加
一般食品の中には医薬品とは異なり、特定の機能性を謳ったものを、効果や安全性について消費者庁の許認可を経た「特定保健用食品」と特定の栄養成分の補給を目的として、1日当たりの摂取目安量が基準内であることで、国への届けや個別審査を経ずに販売する「栄養機能食品」が加わりました。
食品表示法ではさらに、健常人である大人(未成年、妊産婦とその予定者を除く)に対し、事業者の責任において、機能性関与成分により、特定の保険の目的が期待出来る旨を、科学的根拠に基づき表示した食品として、消費者庁に届け出た、「機能性表示食品」が追加されました。
消費期限と賞味期限の違い
食品の表示を見ていると「消費期限」と書いてあるものと、「賞味期限」と書いたものがあると気づきますが、普段はあまりこの違いを意識することは少ないのではないでしょうか?
「消費期限」……品質が急速に劣化する食品に表示されます。(例)魚、肉など
「賞味期限」……品質が劣化しにくい食品に表示されます。賞味期限が切れても食べられない わけではなく、各種試験を行い、安全面を見て短めに設定してある。
反対に極めて劣化が少ない食品に関しては、期限表示がないものがあります。
(例)砂糖、塩、酒類、冷菓など
まとめ
- これまで、多岐にわたって盛り込まれていた、食品表示に関する法律を、食品表示法にまとめて一本化することで、食品の表示が分かりやすくなりました。
- 表示内容のルールをマニュアル化し、消費者もアレルギーなどの内容を選別して購入できるようになりました。
- 新たに「機能性表示食品」が追加されました。
- 消費期限は日持ちが短いものに、賞味期限はおいしく食べられる目安として表示されます。
食品に表示されている内容は様々ですが、よく確認し、自分の食生活にあった商品を賢く購入していきましょう。
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